2003-11 – わたしについて。 – Watashi ni tsuite.
Transcription Source: YKDB
わたしについて。
ごめんなさい。カラオケが嫌いです。好き な人、すみません。
たぶん、アレルギーです。業界に入りたて のころ、打ち上げで無理やりカラオケ酒場に 連れて行かれ、暴力的な音量で情熱的にシロ ウトな歌を次々繰り出されて、すっかり気持 ちが悪くなってしまいました。それ以来どん なに誘われても逃げ続けています。
なのに、歌謡曲のアレンジをはじめたとき は、カラオケで歌ってもらうことこそが喜び のような風潮があって、みんなが歌いやすい 編曲、伴奏を求められ、それもまた鼻にしわ が奇っちゃう気持ちでした。
へそ曲がりの私は、アレンジというものは メロディーに沿わせ、また、世界でその歌い 手ひとりに最高に似合わせるためにするもの であって、そこいらのみなさまに似合ってい ただくためのものではない、と主張し、あげ くに普通では絶対歌い出せないようなトント ロをわざわざつけたりして、せこい意地悪ば かりしていました。そんなことしても、まっ たくしかたないんだけど。
カラオケで歌えるものなら歌ってみい!と いうみなさまへの挑戦状が、CDには紛れ込 考えると子供っぽいですね。エンタテイメン トの風上にもおけない失礼な態度です。
スーパーモデルにオートクチュールで作るのはヤブサカ 対応の既製服をデザインするのはヤダ、というわがままと 同じ。でも、だとしたら私は服が作りたいのではなくて、 あるモデルさんをステキに見せるためにどうするかを考え るのが好きです。ですから、極端なことを言えばモデルさ んがスーパーなら裸だっていい。音楽なんていらないかも しれない。作るモチベーションはいつも、個人に対する思 い、それだけです。
みなさんのココロに届くようこの曲を作り ました、という気の利いたことは、だから私 には言えません。この人が好きだ。この人に 歌って欲しい。この人の絵が好きだ。だから なおせっかいで、動いてるだけだと。このご ろわかってきました。
そういうわけなので、視聴者におかれまし ては、たまにおせっかいが鼻につくかもしれ かと思われる向きもあるでしょう。それに関 じくり返してもポリシーなぞ出てこないので あります。私はどうやら、作曲家ではなく、 編曲家でもなく、音楽家でさえなく、たぶん フィッティングコーディネーター(?)とか、 コピーライターに近いのかもしれません。
それでも、わたし自身のオリジナリティの ようなものを求めてくださる相手には、小さ く本音もお出しするのですが、たいがいそれ はスットンキョーでバカバカしいものでして、 あまり喜ばれたことがありません。
意地悪と思い入れが入り交じった、始末の 悪いラブレターの後ろから、チラチラと見え 隠れするスットンキョー。それが、私の作品 です。なんか文句あっか。
